人気ブログランキング | 話題のタグを見る

七々子塗の胴

昨年の1年間、お世話になっていた剣友会の会長には、いろいろと良くしてもらいました。

家庭の事情で、1年間しかそこの剣友会で稽古ができないことがわかっていたので、できる限り、自分にできることをしていこうという一年間でした。

会長と話しながら、一度、直したい胴があったら、引き受けますといったところ、まず出てきたのが、七々子塗の胴と、黒塗りの立派なつくりの胴でした。

七々子塗の胴の方は、かなり傷んでいた上に、塗が割れて、剥落しているところがあり…工程がたくさんありすぎるのでお断りし、黒塗りの胴のみ受けました。いろいろと、恩義を受けた先生の下されもののようで、とても大切そうでした。

浅野さんの胴だったので、がたつきはありませんでしたが、かなり使い込まれていて、右胴の撃たれる部分については、生地が透けて見えています。

抱茗荷の家紋が入っていましたが、こちらは残したいというので、茗荷紋をマスキングしたうえで胴を塗り直し、丁寧に研いで、磨いて、胸のクロザン革もそれなりに染め直して納めたらば、とても喜んでもらえました。

その後、会長が「喜寿」を迎えられたということで…
「先生、この間の胴、もう一度拝見できますか?」
うーん、縁革が擦り切れてしまっているのはそれほど苦労せずに変えられそうですが…
「この胴は、すごく高かったんだ」と、思い入れは強いようです。
「一度、塗りを全部落として、そのあと、黒塗りにするのは簡単にできますが…」と申し上げたところ…
最初は、渋っていらっしゃいましたが、塗り替えてしまってOKと承諾を頂戴しました。
それでも、会長が落胆しているのはわかったので、剥落した部分のみ、七々子塗を再現できないかと試してみました。

最初から、写真を撮っておいたらよかったのですが、途中で思い出して撮ったのが下の写真。すでに、胸を取り外し、漆が割れて剥落した部分を少し削って整えています。
さらに下は、そこを修復している途中の写真です。


七々子塗の胴_b0390948_00214447.jpg
七々子塗の胴_b0390948_00244691.jpg
塗を、すべて剥がしてしまえばうまくいくと思うのですが…どうしても、修復する場所を限定して削ると、新たに塗り付けた塗膜の厚みが均一にならず、浅い部分は、研いでいくと、「七々子」の模様が消えてしまいます。写真のように、なかなかうまくいきません。

何度か試行錯誤しながら、最終的には「わかっていて、近くで見るとわかるけれど、着装しているところを見ても修復した様子はわからない」という状態までもっていって終わらせました。

会長には、もともと、「黒塗りに塗りなおしてしまう」と告知していましたが、毎週のように途中工程にある胴台を稽古に持って行って、確認してもらいながら修復を進めていった結果、大変喜んでもらえました(と思います)。
いろいろと、誤魔化したところはありますが、竹にも3本ほどガタが出ていて、中の弦が切れて、革が浮き上がっていた箇所がありましたが、そこも補強、最終的には、まぁ、きれいに仕上がりました。
七々子塗の胴_b0390948_00345807.jpg
ちなみに、最初、依頼をお断りした理由には、塗の再現が難しい、ということもありましたが、それ以上に、当時の防具に使われていたのと同じレベルの革が手に入らないだろう、というのもありました。しかし、さすがに、塗りでかなり価格が高くなってしまったのか…意外と、縁革・綴革については、今も手に入るレベルの革だったので、見た目はきれいになって、それほど、購入時から質感を落とさずに修復できたと思っています。

なお、今週頭の月(祝)には、去年お世話になった剣友会の合宿に日帰りで子どもと一緒に参加してきました。会長に稽古をお願いできるとともに、皆様にはあたたかく受け入れていただき、感謝至極でした。

by nobushima | 2018-07-21 00:35 | 竹胴の再生 | Comments(0)

少しずつですが、胴の修理を中心に、剣道具再生のようすをUPします


by nobushima